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テレビ朝日系の「不機嫌な果実」(左)やTBS系の「毒島ゆり子のせきらら日記」など不倫題材のドラマが目立つワケは?
今期は、『不機嫌な果実』(テレビ朝日系)、『毒島ゆり子のせきらら日記』(TBS系)、『僕のヤバイ妻』(フジテレビ系)と不倫を扱ったドラマが3本放送され、さらに「夫を殺した男性との恋」という不倫を超える禁断の恋を描いた『コントレール』(NHK)も話題を集めています。

週刊誌の不倫報道でベッキーさんや育休議員らが猛バッシングを受ける中、なぜドラマだけは「不倫を助長している」といわれかねない作品を放送しているのでしょうか?

不倫ドラマにつきもののベッドシーンも、BPO(放送倫理・番組向上機構)の追及やネット上のクレームを避けるために、「自主規制せざるを得ない」逆風の状態。しかし、テレビ放送におけるヌード描写が難しくなっているにも関わらず、今期の不倫ドラマを見ると、ベッドシーンは減るどころか、むしろ増えているのです。

なぜ不倫ドラマそのものやベッドシーンが増えているのか? 『週刊文春』報道の影響がドラマにも波及しているのか? などを解説していきます。

不倫ドラマのピークは1990年代
まずは、不倫を扱ったドラマの歴史を振り返ってみましょう。1970年代は『岸辺のアルバム』(TBS系)、1980年代は『金曜日の妻たちへ』(TBS系)などの名作があったものの、ごくわずかでした。その後1990年代に入ると、一気に増えていきます。

1990年の『誘惑』(TBS系)、1992年の『十年愛』(TBS系)、1993年の『ポケベルが鳴らなくて』(日本テレビ系)、1995年の『恋人よ』(フジテレビ系)、1996年の『AGE,35恋しくて』(フジテレビ系)、1997年の『青い鳥』(TBS系)、石田ゆり子さん版『不機嫌な果実』(TBS系)、『ミセスシンデレラ』(フジテレビ系)、『失楽園』(日本テレビ系)、1998年『Sweet Season』(TBS系)など、ドロドロから純愛系まで、さまざまな形の不倫が描かれました。

21世紀に入ってからは、2001年の『水曜日の情事』(フジテレビ系)、『昔の男』(TBS系)、2002年の『バラの十字架』(フジテレビ系)の放送後は不倫ドラマが激減。しかし、2010年代に入ると『セカンドバージン』『ガラスの家』『紙の月』『さよなら私』(全てNHK)と、意外にもNHKが不倫ドラマを立て続けに放送しました。そして、2014年の『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(フジテレビ系)が物議を醸したのは記憶に新しいところです。

特にここ数年間は、女性の揺れ動く心境を丁寧に描き、映像の美しさを追求した「女性が楽しめる不倫ドラマ」が増えました。描かれているのは、ドロドロの愛憎劇というより、日常のすぐそばにある危険な恋。ふとした出会いから芽生える恋心や、日常への不満から生まれた必然性のある展開が、女性視聴者の心をつかんでいるのです。

今期の『不機嫌な果実』『毒島ゆり子のせきらら日記』も、「普通の女性でも、こういう状況なら不倫してしまいそう……」という“多少のリアリティを含むファンタジーの世界”を追求している様子がうかがえます。

ヒロインをより魅力的に見せる
今期の不倫ドラマに共通しているのは、女性目線を踏まえたムード重視の筋書きと、映像の美しさ。たとえばベッドシーンでは、直接的な露出ではなく、キャストの表情やセリフ、カメラワークなどの工夫で、視聴者が疑似体験しているような映像に仕上げています。

ムード重視の筋書きと、映像の美しさを生かすためのポイントは、セクシーなイメージの薄い女優を使うこと。『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』の上戸彩さんがまさにそうでしたが、今期の作品でも栗山千明さん、前田敦子さん、相武紗季さんらセクシーなイメージの薄い女優を起用することで、視聴者は疑似体験しているような臨場感を味わえるのです。

逆に、セクシーなイメージは、男優側のキャスティングでカバー。栗山千明さんの相手には成宮寛貴さんと市原隼人さん、前田敦子さんの相手には新井浩文さん、相武紗季さんの相手には伊藤英明さんなど、フェロモンや筋肉美のある男優をそろえています。

もう一点、特筆すべきは、ヒロインに複数の男性とのベッドシーンがあること。たとえば、前田さんは、仕事ができる同業の妻帯者(新井浩文さん)、フェミニンな売れないミュージシャン(渡辺大知さん)、肉体派のジムインストラクター(八木将康さん)という異なるタイプとのベッドシーンを見せることで、さまざまな表情が引き出され、新たにセクシーなイメージが備わりつつあります。

これはヒロインをより魅力的に見せるために、さまざまなタイプの男性を相手役として手配しているのです。元トップアイドルとしての華に加え、セクシーという二面性を見せた前田さんは、今作で男女を問わず多くのファンをつかんだのではないでしょうか。

かつては、『失楽園』のような一人の男性との愛を描いた不倫ドラマが多かったのですが、今期は「そういうキレイごとの筋書きより、ヒロインをキレイに撮ろう」という制作側の意図を感じるのです。

俳優の「素が出る」キスシーン
不倫ドラマの要となるベッドシーンの中でも、キャストとスタッフが特にこだわっているのがキス。小鳥のような小刻みに繰り返すキスから、激しく求め合うキス、拒みながら奪われてしまうキス、シャワーを浴びながらのキス、口に含んだアメを渡すキスまで、各作品が芸術点を競い合うように、多彩なキスシーンを見せています。

キャストのこだわりが見えるのは、とろけるような目などの表情と、優しく髪をなでるなどの仕草。スタッフのこだわりが見えるのは、カメラワークやライティングなどの演出、純白で統一されたベッドやカーテンなどの美術。それぞれがとことんこだわることで、「男性が見たらセクシー、女性が見たら胸キュン」のキスシーンを作り上げているのです。

キャストやスタッフがキスシーンにこだわる理由は、テレビ放送ゆえの自主規制。「一定以上の露出ができない」ことをネガティブにとらえず、「それなら想像力を刺激すればいい」とキスシーンの質を高めることで、ポジティブに勝負しているのです。

多くのベッドシーンを経験した俳優でも、「キスシーンは何度やっても慣れない」「つい素が出てしまいそうになる」と言います。私が取材したある中堅俳優は、「完璧に演じたつもりだったのに、映像を見たらプライベートのクセが丸出しで恥ずかしかった」と苦笑していました。そのような俳優たちのプライベートが想像できるからこそ、視聴者はドキドキさせられるのではないでしょうか。

ベッドシーンに加えて、もう1つ見逃せないのは、男女俳優の入浴シーン。入浴シーンは、男優の鍛えられた肉体や、女優の美しいボディラインを見せられる上に、ベッドシーンへの前振りにしたり、風呂に浸かって考え込むシーンにしたりなど、いいこと尽くめなのです。テレビ放送で許される範囲のセクシーであり、ドラマの筋書きも邪魔しないことから、今後は不倫ドラマに限らず、入浴シーンが増えるでしょう。

「ドラマのキスくらい余裕」女優の矜持
前述したように、今期放送されている不倫ドラマのヒロインには、それほどセクシーなイメージの女優がいません。これは裏を返せば、「女優にとって不倫ドラマは、固定されたイメージから脱皮するチャンス」ということ。特に清純派、アイドル、子役など、視聴者側に強いイメージを与えている女優は、似た役のオファーが多く、年を追うごとに出演本数が減っていく傾向があります。

そんな状況を打破する最大のきっかけが不倫ドラマ。セクシーなイメージのない女優が「不倫におぼれる女性」になりきり、大胆な演技を見せるほど、「オトナの女優に変わった!」「こんなに演技が上手だったの?」などの反応を得られるのです。

私はこれまで数百人の女優にインタビューしてきましたが、ほぼ全ての人が「女優としてやっていこうと決めたとき、キスシーンやベッドシーンの覚悟を決めた」と言っていました。さらに大半の人が「作品の必要性があれば、ヌードにも抵抗がない」とまで言っていたのです。あるインタビューで元AKB48の大島優子さんが「ヌードも辞さない」というコメントをしたことが話題になりましたが、そう考えているのはアイドルのイメージと闘う彼女だけではありません。

映画ではフルヌードに挑む10代・20代の女優も多く、ドラマでも活躍する門脇麦さんや清野菜名さんらの成功もあって、特に平成生まれの若手女優にはフルヌードへの抵抗が少ないようです。それどころか、「女優としての覚悟を示すいい機会」と考えている人も多いだけに、映画出演の多い栗山さんや前田さんも、「ドラマのキスシーンくらい余裕」「もっと大胆にできます」と考えているのではないでしょうか。

ほとんどの女優は、ふだんから美容や体形維持に努め、実際にオファーが来たときには、そのレベルをもう一段階上げて、「作品用の美しい身体に仕上げる」と聞きます。ふだんの努力を生かすためにも、美しい身体を披露するためにも、キスシーンやベッドシーンは彼女たちにとって存在価値を誇示する場でもあるのでしょう。

不倫報道の影響はあるのか?
最後にふれておきたいのは、『週刊文春』をはじめとする週刊誌ゴシップの影響ついて。ベッキーさん、宮崎謙介元議員、乙武洋匡さん、石井竜也さん、桂文枝さん、とにかく明るい安村さんらの報道はインパクトが大きく、「不倫」が2016年のキーワードとなっているのは間違いありません。

しかし、ドラマ界において、この影響はわずかといっていいでしょう。もともと連ドラの放送枠は、4~6月の春、7~9月の夏、10~12月の秋、1~3月の冬と、各季節の3か月間をひと区切りにして、年間4作品が制作されています。

その中には、刑事モノや医療モノのような一年中放送されているジャンルに加えて、春や秋に合う恋愛モノ、夏に合う学園モノ、冬に合うミステリーやサスペンスなど、季節を踏まえて制作されるものがあります。

キャストやスタッフへのオファーも含めて、長いスパンを見据えてスケジュールを組んでいるため、「今年、不倫が世間をにぎわしているからといって、すぐにドラマ化するのは難しい」のは明白。できるとしたら、脚本や演出の一部に遊び心として採り入れる程度でしょう。

最初に書いたように、不倫を扱ったドラマは歴史が長く、「ニーズのあるカテゴリ」として定着しているのは間違いありません。それはもちろん「フィクションだからこそ」であり、視聴者の「ファンタジーの世界だから」という安心感がベースになっています。

各局とも、単に性的刺激を狙ったものではなく、胸キュンのキスシーンや美しいベッドシーンを増やし、ヒロインの切ないモノローグを交えて共感を誘うなど、女性視聴者の支持を高める策に抜かりはありません。また、読み応えのあるコラムがそろい、硬派な読者も多い『東洋経済オンライン』ですら、不倫がテーマのコラムが人気ランキングに入るくらいですから、男性ニーズも間違いなくあるはずです。

視聴者が「ドラマである以上、現実の不倫を助長するものではない」という常識的な見方ができる限り、今後も不倫ドラマは誕生し続けるでしょう。

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